「今さら聞けない」小学校時代に身に着けておきたいこと

就学前、親の愛情に育まれて話し言葉・聞き言葉を獲得してきた子が、小学一年生で文字を習い始め、小学校を卒業するときには、本を読み、本から学び、文で自分の思いを表わせる子に育っていきます。
言葉を通しての伝達方法は、音声言語の「話す・聞く」と、文字言語の「読む・書く」の二通りしかありません。小学校の先生方は、たった6年間で、子どもたちを大人と同じ伝達方法と学習方法をもった人間に育てあげているのです。この点については、学校に子どもたちを預けている保護者はもっと先生方に敬意をもって接する必要があります。と同時に、先生方にはその職務の重大さに襟を正してほしいと思います。
低学年のとき、とても活発でものしりだった子が、中学年くらいからさっぱり伸びないことがあります。それは、この子が「耳学問・見る学問」のまま止まってしまったからです。知的好奇心は旺盛なのですが、知識獲得の方法をテレビや図鑑などの映像文化に頼り、文字を通して獲得することを怠ってきたのだと言えます。
私たちは子どもの教育にかかわる大人は、子どもたちの表面上の活発さだけに目を奪われず、その子ができるだけ速やかに、しかも確実に「読み言葉・書き言葉」での学習、すなわち文章の読解による知識の獲得へ移行するように導いていかなければなりません。
では、読解力をつけるためには、どのような力が必要なのでしょうか。
まずは「音読する力」が必要です。国語の苦手な子は本当によく読み違いをします。間違った読みからは正しい読解はできないので、ゆっくりでよいので、正確な読みの指導が必要です。
次に必要なことは、「問い直す力」です。これが読解力の低い子にはついていないのです。
「問い直す力」とは、こういうことです。
『野原に黄色の花が三本さいていました。』という文を読んで、筆者の言うことがすぐに読み取れなかったら、
「野原に何が咲いていた?」(問い直し)
「花」
「どんな花?」(問い直し)
「黄色」
というふうに、「問い直し → 読み直し → わかる」ということを何度も繰り返して、 読解していくのです。
読解力の低い子は、自分が読解できているのかどうかもわからないのです。だから「問い直す」ことも「読み直す」こともできず、結果として読解できずにいるのです。
この「問い直し」を教師が小さなステップで、 設問として子供たちに出してやります。そうすると、子どもたちは設問に答えようとして、「問い直し」「読み直し」をし始めます。こうして、そういうことを何回も何回も繰り返すことによって、ようやく自分で「問い直し」「読み直し」 のできる子、すなわち、読解力のある子に育っていくのです。
まさに「読解力は一日にしてならず」です。特に映像にどっぷりつかって育ってきた子どもたちを、映像文化の底なし沼から引き揚げ、読解力という山に登らせるには、毎日の小さな「問い直し」「読み直し」の積み重ねを続けるしかないと思っています。保護者が本気になれば必ずできます。保護者も腹をくくって取り組む必要があるのです。
2021年02月19日 18:02